「レッドタートル」 before 「この世界の片隅に」

2016年の劇場版アニメーション。
君の名は。」が大ヒットし、
この世界の片隅に」がネットの話題を独占する一方で、
ほとんど話題にも上らなかった「レッドタートル ある島の物語」。

大変な傑作だったのではないかと、いまさらながら思う。
今思い出しても、パソコンで文字を打つ手が止まり、映画の世界に引き戻され、涙腺が緩んでくる。

ほんの気まぐれで、さほど期待せずに見に行ったら、大当たりだった。
最初は先入観で、自然の素晴らしさ・動物愛護・環境保護とかを訴える映画かと思ってた。
そのようなメッセージ性は全然なかった。

一応ジブリ映画なんだけど、まったく異質。

どこがどう素晴らしいのか、説明に困る。
まず映像が美しい。
ほとんどのシーンは淡々とした島での日常生活。
ただし(内容は書かないけど)その発端に非日常的な怪異というか神秘現象がある。

あれ?
これって「この世界の片隅に」にもそのまま当てはまるじゃないか。
「この世界…」もメッセージ性を廃し、戦時中の一般庶民の日常生活を美しい映像で淡々と描く映画だった。
怪異で始まるのも同じ。
すずと周作を結び付けた人食い鬼の存在だ。

あまりに淡々と日常が続くので、観客は冒頭の怪異のことを忘れてしまう。
しかし(ちょっとネタバレだけど)最後にまた怪異は蘇るのだ。 両作品とも。

(あ、「この世界…」は中盤にも座敷童(?)が登場したっけ)

非日常的な神秘の存在によって、日常のリアリティがさらに際立っている。

そうか!
これは我々の人生そのものじゃないか!
我々も「誕生」という神秘でこの世に生を受け、
淡々とした日常を過ごし、
「死」という神秘で去ってゆく。
・・・なーんてね。

そんなわけで、とっくに公開終了してる「レッドタートル ある島の物語」だけど、機会があったら是非見てください。


蛇足:
序盤に、ほんの数秒だけど、非常に怖いシーンがあって、映画館で「ひっ」と軽く悲鳴を上げてしまった。
閉所恐怖症ぎみなので。
同様の人は覚悟しましょう。