超能力? スプーン曲げ
超能力などの超常現象には懐疑的な私だが、はまっていた時期もある。
それは自称超能力者のユリ・ゲラー来日をきっかけに、日本中が超能力ブームに沸いていた頃だ。
「超能力少年」が続々と現れ、スプーン曲げを披露していた。
ユリ・ゲラーが時間をかけて念を送ってスプーンを「切断」していたのに対し、少年たちはスプーンを空中に放り投げて一瞬で「曲げて」みせた。
凄い時代だった。
何か新しい世界が開ける前触れではないかと浮足立った。
そんなある日、とある超能力少年(確か小学生だったと思う)を招いてデモンストレーションしてもらう小さな集会に参加した。
気がむいたら技を披露してもらい、合間に参加者が雑談しているだけの、なんともお気楽な会だった。
私は誰にも内緒で事前にスプーンを購入しておいた。 それをさりげなく少年に渡し、また雑談に戻る。
少年はしばらくスプーンをもてあそんでいたが、突然ポーンと床に放り投げた。
見るとスプーンはまっすぐなまま。「なんだあきらめて放り投げたのか」と思ってガッカリしたが、すぐに異変に気付いた。
それが写真のスプーン。
180度ねじれてる。
実はスプーンを手でねじる技もよく知られている。
まず直角に折り曲げてからねじり、まっすぐに戻すのだ。
しかしそうするとどうしてもイビツなねじれ方になる。
これは見ての通り綺麗にセンターを軸に対称形にねじれてる。
少年はずっと人目につく場所でスプーンをいじっていたが、その間、目を離さず観察していたわけではない。
また、熟練すれば、曲げたりねじったりを繰り返して対称形にすることも可能かもしれない。
しかし子供が人目をごまかして短時間でそんなことができるのか?
スプーンは私が買った品である・・・たぶん。
少なくとも同一の製品には違いない。
近所の店で買った品なので、事前に同じ品を買っておいて、ペンチやら万力やら使って入念にねじっておいたという可能性もゼロではないが。
そんなわけで、超常現象にはまるのをやめて、懐疑派を自称するようになった今でも、この1本のスプーンの謎は解けず、ずっと心に引っかかっているのでありました。